デルフト陶器
16Ｃ頃にはオランダ各所に陶器の窯元があり、マジョルカ焼きの流れを汲む陶器や、イタリアやスペインから伝えられたガラス細工などを製造していた。デルフトにもこれらの製造元があり、小規模ながら陶器産業が発達していた。17Ｃになり、東インド会社が中国から大量の陶磁器を輸入し始める。中国陶器の持つ独特の色合いやエキゾチックな模様に魅かれ、地場の陶器の人気がなくなっていく。そこでデルフトの陶工達は中国陶器のイミテーションを作ることで生き残りを図る。中国陶器の製作過程を見たこともなかったため、独自の作り方で試行錯誤を重ね、陶工の創意と独創性が反映された白地にデルフトブルーと呼ばれる青い模様のデルフト焼きが生み出されていった。中国陶器だけではなく、ペルシアや日本の伊万里の影響も受け、デルフト焼きはそれまでの西洋的な陶器とは異なり、また、中国陶器とも一味違った魅力でヨーロッパでの人気を獲得していく。その後18Ｃまでたくさんの窯元がデルフト焼きの看板を掲げていたが、イギリス製陶器との競合や経済の悪化が理由で多くの窯元は閉鎖、当時から残るのは王立ポースレン・フレスのみ。 デルフト焼きに使われる粘土はオランダ産ではなく、フランス、イギリス、チェコからの輸入土を混ぜ合わせて使う。オランダの土壌は砂が多く、陶器には向かない。陶器作りは石膏型に粘土を入れるところから始まる。皿や鉢は型に入れて成形できないのでロクロを使う。最初の窯入れの温度や焼き時間は窯元によって異なるが、1150度位で約24時間かけて焼きあげる。次の絵付けが最も重要視されていて、普通は枠型をなぞるが、枠型がなければ絵付け師のタッチが作品を左右していく。次に黒いコバルトと白のうわ薬を塗り、もう１度窯入れし1150度位でまた24時間ほど焼きあげる。すると白の上塗りが透明になり、黒の模様がデルフトブルーの青に変わる。最後に裏に証印と、窯元のマーク、絵付け師のサイン、番号が入れられて完成。
デルフト
運河に囲まれた古都で、画家フェルメールの故郷。町全体が様々な破風屋根を持つ建物によって、絵画のように飾られている。運河を利用した交通の要として、中世から栄えたデルフトが、1246、ウィリアム２世によって都市としての自治権を得てから特に織物業、ビール醸造業、貿易でますます発展。更にその名を世界に広めたのが、澄んだ蒼い模様のデルフト焼き。デルフト焼きの陶磁器の製造は17Ｃからで、最盛期には30の工場が立ち並んだ。当方貿易で輸入されたアジアの陶器に人気が集まり、また近代の大量生産の波に押され、一時は衰退を余儀なくされた。この町の窯元は生き残りをかけて人気の中国陶器の真似を初め、売れる商品の開発に躍起になった。何度化の失敗はあったが、日本の伊万里焼にもヒントを得、地中海の陶器、中国陶器などの多国籍の陶器の素晴らしいところだけを取り、試行錯誤を繰り返しながらデルフト焼きというオリジナリティーに富んだ世界を確立。
最近では昔ながらの手法を使った２つの工房が上質な焼き物を作り、芸術品としての価値を認められている。イタリアンのマヨルカ焼きを母体に、中国の染め付け、日本の伊万里焼の意匠を模倣、更にフランドル絵画やロココ様式の美をミックスさせて、東西折衷のスタイルを完成。絵柄は全て手描き。食器、花瓶を初め、置物、タイル、アクセサリーにと用途は広い。 デルフトは、オランダの偉大な画家の１人フェルメールが 1632に生まれ、1675に死ぬまでの43年間を暮らした町。生誕の地を愛し、「デルフトの眺望」という名作を残した。彼の生涯の作品は30点しかなく、大半が１室を舞台に女性１人を描いたものが多い中、特異な舞台を背景にして描かれている。部屋の外から入る光の下で１つの作業をする人物の光景を描いたものが多い中、この作品だけ風景画。 市庁舎：1620、ヘンドリック・カイセル作のルネッサンス様式。後方の監獄塔は15Ｃ。 新教会：1381。幾度かの改築・増築が繰り返され、完成したのは15Ｃ。後期ゴシック様式。画家フェルメールの墓、建国の父と慕われたオラニエ公爵のウイレム１世の墓がある。 167番地の家：1520。装飾が素晴らしい。 プリンセンホフ博物館：15Ｃに修道院として建設された。フランボヤン様式。1575〜オラニエ家が所有していたが1584、ウイレム１世がここで暗殺されたという悲劇の舞台になる。暗殺時の弾痕の跡が残る。デルフト焼き、絵画の歴史を展示。 旧教会：13Ｃ。時計塔は国内１の大きさを誇る。
